黒須信雄

疫病時代の犬が吐く息 
小品による回顧1980-2021

2021/7/3(土)- 7/18(日)
12:00 - 19:00 月、火休廊

黒須信雄 経歴

「疫病時代の犬が吐く息 小品による回顧1980-2021」   黒須信雄
今回、表現様式と云う観點からするなら多岐多様な諸作間に通底するものとして、存在形式転換としての顕現への視座・思考を些かなりと摘出することを意図して作品の選定を行なった。小品のみに絞り尚且つその中でもドローイング類を除 いたため、仕事の全容を示すには不充分であるものの、謂わば作家以前の未だ模索の裡にあった十代終わりから二十代初めのものから網羅することで或程度思考及び志向のヴェクトルは提示できたのではないかと考えている。
 尚、展覧会名はフランク・ザッパ『アンクルミート』から引用した。嘗て制作の方法論を模索する中で美術家は勿論それ以外の分野の人々からも様々な示唆を受けたが、ザッパからは方法意識の上で多大な影響があったからである。その他、方法意識への示唆と云う一點に限っても、例えばピーター・グリーナウェイやアルチュール・ランボオやジョルジュ・バタイユなど恩恵を受けた先人は数知れない。以て垂頭すべし。
処で、旧作を顧みるときには継続と断絶双方が感得されるが、必ずしも継続が〈私〉を安心させるわけではない。作品の自律性・自體性に鑑みるなら、寧ろ断絶こそが継続の前提要件であり、おそらくそうした構造は個人を超えたものとして階梯的に組織化されるのである。埴谷雄高云う処の「精神のリレー」もかくなるものだろうし、そもそも藝術に歴史有りとすればこの構造の複層化を措いてはないのである。

制作には実践と論理的思考双方が不可欠であり、当然ながらそのために旧作を〈外部〉に置いて眺めることは頗る有効である。畢竟、一切は無に帰するとしても、無に於て顕現する〈現在〉をこそ私たちは生きざるを得ないのだから───。

2021年6月記

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