絵画は存在論的遡行意志に拠る存在形式転換としての顕現である。その意味で、画家に於て絵画は〈死〉に近しい。〈死〉は〈存在しない〉。絵画も〈存在しない〉。絵画が〈存在する〉とは〈存在しない〉に於てのみである。一方で、存在的現象としての絵画は現に存在する。従って、絵画を認知するには形象を必要とするが、表現ならざる顕現としてのそれは、〈虚―虚〉対峙の彼岸に〈出現即消滅〉として望見されるに過ぎない。それを現実裡に留めるのは〈根源形象〉の残影である。
無論、根源に於て未だ形象は無い。ならば、それ自體が例えば地平線の如く決して到達し得ないものであって、到達し得ぬ地平線への歩み、その不可能的働きかけこそが〈根源形象〉の実質とも云えよう。
〈根源形象〉とは夢見られることのない夢見である。
2020年11月9日 記