当ギャラリーでは6回目となる渡辺伸個展「望郷」を開催致します。
塗り重ねたり削ったりした絵具の跡と多彩な色は互いに響き合い、抽象的な画面からある場面や風景が現れます。それは作家の日常や思考、懐かしい風景であり、現在を映す鏡でもあります。
今回10年ぶりにBELLBET吉祥寺ショールームでも同時開催致します。こちらでは絵画とヴィンテージ北欧家具のコラボレーションもお楽しみ下さい。
130号から0号までの大中小織り交ぜた新作を、2カ所で合計約50点展示致します。多数の作品が並ぶ3年ぶりとなる個展、ぜひご高覧下さい。
絵を描く
ツェッペリンやジェフ・ベック、クリムゾンなどのロックに目覚めた10代前半の多感な時期に、絵を描くきっかけになったセザンヌやゴッホにピカソ、国吉などに憧れ画集を眺め模写などに興じていた時分から、かれこれ50年近く経つのだが、未だモッサリとした絵を描く髪をだいぶ失った白髪頭の私が居る。まあ、これが現実だと受け入れ夜更けまで酒を飲み気が大きくなった衝動で殴り描きをし、あちらこちらに絵具を撒き散らし、翌朝がっかりする事が多々あり。
新型コロナウイルスの収束が見えない中で過ごす日常生活は大変ですが、明けない夜はないと願い、息を潜めやり過ごしています。新型コロナウイルスの影響、もしくは還暦過ぎの身体をいたわる意味で禁煙、禁TV、禁外飲み…流石に禁酒は無理なので宅飲み。ここ数年は、9時前後に寝て、明け方の3時頃から制作を行う日々を過ごす。
向島の自宅から会社がある京橋まで隅田川沿いをウォーキングしています。この付近は池波正太郎や山本一力などの時代小説や東野圭吾の舞台になっており江戸と東京が交差する。隅田川は、きれいな川とは言えませんが、船の行き来や鵜飼の群れが魚を咥え、カモメが飛ぶ光景は情緒がある。雨が川面に降り注ぎ、傘を差して橋を渡る人々は北斎の描く世界とシンクロする。
現在の制作方法は、「タテタテ ヨコヨコ まるかいて チョン」のリズム。原初的な衝動を、身体を使って筆跡や形、色彩で表現しています。まだまだ思い通りには行きません。描いたり消したりを繰り返す事で絵と対話し、導かれる様に作品を制作しています。まれに“ウムっ”と思うような事に出くわしたりするので続けているのでしょう。映画や本の一節、一瞬で通り過ぎた風景や匂い、旅先の出来事や朝焼けの色。雲の動きや遠くで光る落雷、ちびた鉛筆や石ころのような石鹸にボロボロのウェスなど愛着ある事象を網膜や記憶の底から呼び起こし自身のフィルターを通し社会との繋がりが出来れば幸いです。
2022年3月28日
渡辺 伸
<同時開催>
渡辺伸 Life
5月7日(土)― 22日(日) 11:00 – 19:00 (木)休
Bellbet吉祥寺ショールーム
180-0005 東京都武蔵野市御殿山1-5-7 2F