雨奇晴好
-硝子・陶・漆
2014/6/12(木)– 6/29(日)
12:00 - 19:00 月、火休廊
オープニングレセプション
6/12(木)17:00 ― 19:00
Gallery惺SATORUでは6月12日(木)より29日(日)まで「雨奇晴好-硝子・陶・漆 石田菜々子 川村今日子 百瀬玲亜」を開催致します。
石田菜々子は2012年東京藝術大学大学院を終了、大学で鋳金、大学院でガラスを専攻しました。2012年の卒業制作は取手市長賞を受賞し取手市所蔵となっています。おもにキルンキャスティングによる少女や動物をモチーフにしたガラス造形を制作。目を閉じ微笑む少女の表情やユーモラスな動物達とガラスの質感があいまって柔らかい空間を作り出します。吹きガラスやパート・ド・ヴェール等による器も展示致します。
川村今日子は女子美術大学の造形学専攻を卒業後、更に技術を学ぶためイギリスに渡り、現在もイギリスで制作をしています。研究を重ねている結晶釉は、焼成の間に釉薬が結晶となって開き、表面に花や雪の結晶のような模様が出来るのが特徴です。白を基調としたシンプルで華やかな磁器による花器や食器を展示致します。
百瀬玲亜は金沢美術工芸大学大学院を修了後、金沢卯辰山工房に入所。有機的なフォルムは生物の形態のようでもあり、またいくつかのイメージが混ざり合ったもののようでもあります。手触りや艶にこだわった質感とビビットな色彩による現代的な作品は若き漆芸作家として将来性を感じさせます。オブジェと酒器を中心に展示致します。
伝統技術をふまえつつ現代的な表現を追及する硝子・陶・漆の工芸作家三人展です。
それぞれの作家のオブジェとうつわを展示致します。
雨奇晴好 = 晴れの日も雨の日も、愛でて、使って、愉しめるオブジェと器。そんな願いを込めました。ぜひご高覧下さい。
硝子 ー 石田菜々子
「人物シリーズを作る際に大切にしていること」
人は目を閉じた時、何を思うのでしょうか
夢を見ているのか、願い事をしているのか、
はたまた遠くの誰かを想っているのか
何かを思い、考える姿は儚く美しく感じます
人の曖昧な記憶、感情、感覚、
それらは様々なイメージと合わさり交じり合い
沢山のかけらとなって私に語りかけます
それは自分でも気付かなかった
心の奥底の感覚とでもいうのでしょうか、
知っていたようでもあり、初めて出会う感覚である気もします
掴めそうで掴めない、脆く曖昧なかけらたちを
ガラスにのせて表現できたらと思います
陶 ー 川村今日子
日本で陶芸を始めてから15年になります。初めは和食器から作り始め、オブジェ作品に系統していき、その技法を学ぶため現代美術の盛んなイギリスに渡ります。この間敢えて都会を離れ、初めはイングリッシュリビエラと呼ばれたデボン州、その後コーンウォール州の大学の陶芸科に所属し本格的な制作活動を行います。コーンウォールは、民芸焼きの浜田庄司に手ほどきを受けたバーナードリーチの工房があることでもよく知られています。
私の作品のほとんどは、丸みを帯びたフォルムが特徴で、コーンウォール時代に見た海の色や水しぶき、海岸に上がった貝殻、海藻、浜辺の紋、丘の稜線、丘一面に鮮やかに映える緑色、多種類の花々など自然から多大な影響を受けています。
また、日頃から人間の身体、骨の形、オーガニックな形にも興味があり、その形も暖かみを持っていることから癒しをテーマに して制作に取り組んでいます。
渡英してから暫くは、陶磁器のインスタレーションという形で作品を発表し続け、この時に鋳込み技術を習得しました。同じ頃、結晶釉と出会いそこからライフワークとなる研究が始まります。私は釉薬の調合に亜鉛を使用しているため、亜鉛華結晶釉と呼んでいます。
結晶釉というのは名前の通り、雪の結晶模様や花の模様、さらに水玉模様など、釉薬の調合によって、色々な形の結晶模様がでる釉薬の一つです。釉薬の全体は透明釉のようでもあり、結晶の模様部分はそれとは異なり独特のかさかさしたマットな質感があります。その質感はシルクのようで花の模様は地紋の着物を思い起こさせます。 この技法は、古くは中国やドイツなどの磁場で見られます。またイギリスのウェッジウッドのファクトリーにも大きな壷が置いてあり、実験的に制作したものと見られます。
私は現在、イギリス国内で個人のメーカーとして制作をしているのでさほど問題はありませんが、結晶釉はたとえ工場ラインにのせても、施釉方法が難しくロスもでることから量産できにくいのも特徴といえます。2006年からロンドン郊外のスタジオで結晶釉の研究開発を行い、多数の実験の元に数年前にようやく自分の釉薬 ができました。結晶釉はきめの細かい真っ白な磁土が映えるのですが、最近は、土の感触を生かした陶器と結晶釉を組み合わせた作品も作り始めています。
曲線のあるシンプルなフォルムに艶やかな地模様の釉薬、華麗な美と凛とした静かな美を表現しながら、少しでも観る人の心が癒されるような
作品を作れたらと日々願っています。 2014年 川村今日子
漆 ー 百瀬玲亜
私が漆を用いて制作するのは、その塗膜の魅力にある。触れたときの、なめらかでしっとりとした特有の質感を想起させる艶である。この視覚に訴えてくる深い艶と、実際の触り心地は他の塗料にはない独特のもので、制作の根源はその塗膜によって呼び起こされる触りたいという感情にあり、そこから艶を活かすための形体を探求し、魅力を伝えられる造形物の制作を目指している。
特に形状に一定の決まりのある器物だけではなく、漆という素材そのものを魅せるための形をもつオブジェに可能性を感じている。例えば貝殻の豊かに膨らんだ曲面と複雑につながっていく形や滑らかな表面の色艶は、何に使うという訳ではないが思わず手に取りたくなる魅力があり、飾り置いてその佇まいを眺めて、ある時は手に取り質感や細部を楽しみたくなる。見つけてきた貝殻のように生活の中に溶け込む面白い造形をしたいと考える。
今回の作品は、花が咲く、実が生る、芽が伸びるといった刻々と変わっていく動きを、形と色と光の加減で多彩に変化する漆の塗膜で表し、一瞬の移ろいを長く愛でられる飾りとした。