谷充央展

2025/9/6(土)- 9/21(日)
12:00 - 19:00 *最終日17:00迄
月、火休廊

谷充央 経歴

いつもどうりの表と裏をテーマに制作しています。
今回は意図的に矩形を多く使っています。
その矩形を紙の上に墨を使って描いていきます。黒一色です。
作品として皆様に提示しているのはその裏側になります。
裏側を視て描いた面を想像していただければと思います。
― 谷充央

I am creating works based on the theme of the usual front and back.
This time, I am intentionally using many rectangles.
I draw those rectangles on paper using SUMI. It is all black.
What I am presenting to everyone as my work is the back side.
I hope you can imagine the side I drew by looking at the back side.

SUMI-a traditional Japanese black color ink.

― Mitsuo Tani





表と裏と表 ―谷充央

作品にもちいられる素材は、その表現の必然である。代替品は存在しない。間違いなく、その素材でなければならない。
谷充央は永く、アクリル絵具とキャンバスによって、彼の主題である「表と裏」を描いてきた。キャンバスをモチーフとして、表裏のありようを写実的に画面上に創造する。
キャンバスの「裏」側から「表」側へ絵の具を染みださせるように描き、画面に「表と裏」を同存させる。描きかさねた絵具層を洗い流して、絵具層の「裏」に存在する色を出現させる。青色などの絵具で矩形を描いた上に、赤色の絵具層を薄く描きかさねて「表」全体を覆い、「裏」に存在する色やかたちを、観る者の眼のなかに浮かびあがらせる―こうした表現は、アクリル絵具やキャンバスという素材でなければ、成し得なかった。
2018年に入り、谷は、黒と和紙とを手にとった。そこから現在にいたるまでの仕事において、彼は、アクリル絵具とキャンバスでは到達し得なかった「表と裏」を、描こうとしている。
このたび展開される最新作は、正方形という画面フォーマットもあいまって、どこまでもつづく奥ゆきがあり、「表」と「裏」とのはざまを浮遊するかのような感覚におちいる。一瞬、身の置きどころの手がかりを失いそうになるが、空間に浮かぶ矩形や、時おり絶妙に差しはさまれる赤い線や青い色面によって、私たちの意識は引き戻される。私たちがみているのは、あくまで絵画という平面である。
そう自覚したところで、私たちは再び、「表」と「裏」の奥ゆきの深みにはまりこんでゆく。谷は「表」から「裏」を描き、「裏」から「表」を描いている。否、谷が描いているのは、「表」そのものであり、「裏」そのものでもある。では、いま私たちがみているのは?私たちが立っているのは? …谷が描く「表と裏」の風景は、私たちを実存にかえすのである。
さて、谷の手から最新作として示されるあらたな風景には“fairy tale”というタイトルが付された。「表と裏」とは、私たちの存在という現実が前提である。だが、彼のつくりだす風景のうつくしさを問われれば、それを“fairy-tale landscape”と言っても許されるだろうか。

滋野佳美(武蔵野市立吉祥寺美術館学芸員)

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