
「深い森」
同じ森を何度も歩いているのです。昨年は台風の暴風で何十年も生きていたような大木がばたばたと倒れていたり、そうかと思えばイヌブナは7年ぶりに実をつけて、寒桜はちゃんと冬に咲いていました。劇的なこととそうでないことが普通に存在しています。
そして、私が植物を描くようになって3、4年が経つのですが、最近とくに「時間」「順序」「役割」ということについてよく考えるようになりました。7年前に引っ越してきた我が家の庭にはほとんど何もなく、植物を植えては観察することを繰り返してきました。観察する植物たちは長い時間をかけてそれぞれによく順応し、様々な虫や鳥などを呼び集め、健やかにあります。
森を歩いたり、植物の観察を続けているうちに、与えられた時間の中で順序に沿って自分の役割を果たしているかという漠然としたテーマがいきなり与えられたように感じます。お気楽に歩いていたらとても深い森に入り込んだような気分です。
―平埜佐絵子