広沢仁

垂直的人間

2023/3/4(土)- 3/25(土)
12:00 - 19:00 月、火休廊
STORES
interview

広沢仁 経歴

木彫を始めて思うのは、版画のプロセスに近しい感じがままします。というのは、予めゴールというか完成目標をたてて、それを逆算しながら労働を通じて実現していくところ。これが塑造だと油絵の様に進んだり戻ったりで埒が明かなくなりそうで、一方方向の後戻り出来ない不自由さが私自身相性が良いのでしょう。そういうわけで手探りで始めた割にはすんなりはまりました。また何より好きなのは刃物を研ぐ時間で、頭の中を空っぽにしてシャコシャコ研いでいると倦んだ日々から解放され、宇宙と繋がる様な多幸感に包まれます。いつの間にか砥石や刃物も増えて、形だけは一丁前になってきました。道具に対するフェティシズムも版画的気質の一端かもしれません。

今までは、ドローイングを描きためてからまとめて版画にというルーティンで制作していましたが、立体は概ね過去版画で作ったイメージを起点にしています。そして今回の版画は初めてドローイング→木彫→版画の順番になりました。イメージが次元を跨いで大きく変わった様な気もするのですが、たいして変わってない気もします。

石を並べれば彫刻になる様に、言葉を並べれば詩になる様に、寄る辺ない立体を並べる事で新たな関係が生まれ別種の物語が動き出せば良いなと思います。

展覧会タイトルの「垂直的人間」はイギリスの詩人オーデンと田村隆一の詩からとりました。

「僕らは地平的人間のほかは
誰だって買いはしないのだが
もしできることなら垂直的人間に
敬意を惜しまないことにしようではないか」
W.H.オーデン(深瀬基寛訳)

「言葉のない世界は真昼の球体だ
おれは垂直的人間
言葉のない世界は正午の詩の世界だ
俺は水平的人間にとどまることはできない」
「言葉のない世界」田村隆一

コロナの死者数は増え続け、ウクライナの収束は未だ見えず、知らないうちに国家中枢にカルトが侵攻、赤子は生まれず、その上政治的アパシーは瀰漫し、ほんと「我らの狂気を生き延びる道を教えよ」。

Archives

  • 広沢仁 垂直的人間

    広沢仁 垂直的人間

  • 広沢仁 荒地/帆船

    広沢仁 荒地/帆船

  • 紙の上の思考Ⅶ-words

    紙の上の思考Ⅶ-words