紙の上の思考Ⅳ
– POINT

Thoughts through Drawing

2017/1/21(土)- 2/5(日)
12:00 - 19:00 月、火休廊

オープニングレセプション 
1/21(土)17:00 - 19:00


岡田浩志 経歴 
黒須信雄 経歴 
さとう陽子 経歴 
常田泰由 経歴 
山神悦子 経歴

このたび当画廊におきまして「紙の上の思考 Ⅳ / Thoughts through Drawings – POINT」を開催致します。
この展覧会は、紙を支持体にして描くという最もシンプルな素材と技法で絵画の魅力を探ることを目的に2015年にスタート致しました。
ドローイングとは、制作に入る前に最初のイメージを描きとめるスケッチという認識がありますが、それ自体が作家の意図をダイレクトに伝えてくれる作品として魅力があります。またもともと紙を素材に描くアーティストも以前から存在しますし、日本人にとってなじみ深い表現方法のように感じます。
この展覧会では、様々な表現・ジャンルの現代作家のドローイングを紹介していきます。今回は「POINT」をテーマに致しました。それぞれの作家が作品の「POINT」を解説しています。

 岡田 浩志 / OKADA Hiroshi

 point-視点
作品を見るときの視点は流動的で、限定された平面上を移動し続けるものと考えています。
私にとってドローイングは対象から得た情報を画面上で再構成することです。そもそも見るという行為は能動的で、人には見ようとしたものしか見えないと思います。目に映ってはいても知覚されない情報は認識されないまま過去になるだけです。情報は観察の時点から無意識に取捨選択され、抽出される要素は常に均質ではありません。
それが均質で統一性のある状態に描かれることがあるのは感覚以外の意識や観念が働くからで、ドローイングの直截性はそれらの介入が制限されることで保たれると思います。
描き進める過程は常に部分的で、その集積が全体を構成します。ある部分が描かれるときに意識された情報が明確に取捨選択されてかたちになれば、画面上で連続・関連する要素は不均質となります。画面上を流れ動く視線が、連続する不均質な部分を通過しながら全体を捉えれば、実感を伴う無内容が実現できるのではないか考えています。

still life 2016n3 (オリエンタルリリー)
257mm x 343mm
和紙に鉛筆、色鉛筆、パステル、テンペラ 2016

黒須 信雄 KUROSU Nobuo

絵画の実質とは存在論的遡行意志に基づく存在形式転換としての顕現であり,実―虚の対峙する交點に〈ゼロポイント=無極點〉として成立する。そしてそれは、尠なくとも二つ以上の(例えば〈画面に〉と〈画面を〉)の異義を同義と並立させることで現実との接點を保持する。無論、絵画の成立は必ずしも純粋顕現を必要としないけれども、〈始原ならざる始原〉への意志が顕現ならざる表現の減退を齎すこともまた否めない。
ドローイングは、表現の多寡に拘らず、本質的に純粋顕現への道程には向かわない。とは云え、それは〈在り得ぬものへの意志〉を欠くからではなく,意志の起動點が一旦ずらされることで存在者の自體性を解體することに〈あわい〉を設定するためである。
〈始められないこと〉はそこから〈始められる〉。

「無題」
22.3×15.5cm 紙にアクリル 2016

さとう 陽子 / SATO Yoko

無地の画面から始めるドローイングだとどこか予想できてしまう気がした。
とりあえず身近なカレンダーの絵柄や数字を切り抜き、貼って素地にしてみた。
しばらく眺めているとそこから線が沸くように見えて来た。
ドローイングの出所(point)がずれて、線が勝手に動き出したようだ。

「逃げ水3」
紙にコラージュ、アクリル、オイルパステル、鉛筆
38×29cm 2017 年

常田 泰由 / TOKIDA Yasuyoshi

”a.b. ” ― 潮が引きできた、岩の凹みに貝殻や石が溜まっていた。波が並べた浜辺の配列。
”c.t. ” ― 砕かれた古い屋根瓦が積まれていた。破壊と積み重ね。
”p.b. ” ― 木立の奥、通りすがりの猫と目があった。
ものが集まってくるPOINT。

”a.b.-3” 28x21cm 水彩、和紙2016

山神悦子

最近のモチーフである鉱物を描く時に、外観だけでなく生成の仕方も知った上でイメージを形作っている。
例えばオパールは珪酸を含んだ約50℃の液体が岩の隙間にしみ込んでゆっくりと沈殿して生成する。ダイヤモンドは地下100km以上の深さから爆発的な噴火によって新幹線並みの高速で地表に吹き上げられる。これが低速だと、同じ成分だとはいえ石墨になってしまう。このように、様々な鉱物が生成される条件には温度や圧力、速度などにも重要なポイントがある。
紙にオイルパステルで描き、拭き取ったり、また塗り重ねたりして鉱物のイメージを掴もうとしていると、画面の質感が変化するポイントにぶつかる。少なくともそれを越さないと作品が出来てこない。私はそういう描き方でモデルになる石に敬意を表したいと思っている。

「辰砂(しんしゃ)」”Sinnabar”
18x14cm oil pastel on paper 2016

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